「占(うら」)木内昇著
「占(うら」)木内昇著
桐子は、生まれ育った家で翻訳の仕事をしながら一人暮らしをしている。そんな生活に年下の伊助が紛れ込んできた。伊助は大正も末だというのに江戸っ子のようなきっぷの大工だった。
ある日、ぼろ長屋に住む伊助に同居をもちかけたところ、突然、彼が生き別れの義妹・梅の話を始める。伊助は、口減らしのため遊里に売られた梅を探し続けていて、見つかった折には身請けして一緒に暮らすつもりだという。
以来、会えば梅の話しかしない伊助の心が分からず、桐子は本心ではないが別れを切り出す。それっきり、伊助は姿を見せず、何とか彼の心を取り戻したい桐子は、表札に「卜(うらない)」と書かれた一軒家の格子戸をあける。
ほか、千里眼と呼ばれるようになったカフェの女給など、占いを巡る女たちの葛藤を描く作品集。
(新潮社 781円)