「歌舞伎の中の日本」松井今朝子著
「歌舞伎の中の日本」松井今朝子著
かつて歌舞伎の企画・制作に携わっていた直木賞作家による入門書。
現在上演されている歌舞伎は、膨大なレパートリーの中から、各時代の観客によって淘汰されたものである。歌舞伎を見れば、先人たちがどのようなストーリーやシチュエーション、表現方法を好んだかが分かる。さらに時代ごとの文化や風俗が巧みに取り込まれており、歌舞伎を見ることは、私たち日本人を知ることにほかならないと著者はいう。
本書では、17世紀中ごろに作られた「暫」に始まり、幕末の「三人吉三廓初買」まで歌舞伎を代表するレパートリー10演目を成立年代順に取り上げ解説。それぞれの成立の過程や当時の観客の受け取り方を探り、日本人のセンスやメンタリティーを再確認しながら、その魅力の神髄に迫る。
(集英社 880円)