「希望のゆくえ」寺地はるな著
「希望のゆくえ」寺地はるな著
誠実(まさみ)の28歳の弟・希望(のぞむ)が失踪した。その日、マンションの管理会社に勤務する希望が担当するマンションで火災が発生。理事会に立ち会うため居合わせた希望は、出火元の住人の女性と駅方面に向かったまま姿を消したという。
合鍵を使って、希望が1人暮らしをする部屋を訪ねると、冷蔵庫に弟が10歳のときに家族旅行で出かけた天草の真珠養殖場で撮影した写真が貼ってあった。弟は誰からも愛される人だったが、思い返せば弟について何も知らないことに気づいた誠実が、高校時代の彼女や同僚など、希望を知る人に話を聞いて回ると、弟のさまざまな顔が見えてくる。
人生の痛みを抱える登場人物たちが、それぞれの「希望」を見つけ出す物語。最終章に書き下ろし短編を収録。
(新潮社 693円)