「ロシア文学の教室」奈倉有里著
「ロシア文学の教室」奈倉有里著
ウクライナ侵攻で厳しい視線を向けられるロシア。その戦争の渦中に、あえてロシア文学を取り上げ、異次元のアプローチで読み解く入門書。
舞台は大学のロシア文学科。新年度が始まり、枚下教授は、集まった湯浦(ユーラ)、新名(ニーナ)、入谷(イリヤ)ら学生を前に体験型の授業を行うと宣言。初回の講義の朝、湯浦が課題のゴーゴリ作「ネフスキイ大通り」を読んでいると、いつの間にか自分は物語の登場人物で夢想家の貧乏画家ピスカリョフとなってペテルブルグの街中に立っていた。彼に話しかけてきたイリヤは、もう一人の登場人物・中尉のピロゴフのようだった。
以降、プーシキン作「盗賊の兄弟」など12作品を取り上げ、その物語世界を「体験」する。 (文藝春秋 1595円)