「暗号の子」宮内悠介著
「暗号の子」宮内悠介著
ゲーム画面の右上にメッセージが配信された「レゴラスからエオメルへ。ワールド十四番で待つ。」。十四番に移動させると画面に海辺が映り、四阿(あずまや)でレゴラスが待っているのが見える。梨沙はレゴラスの本名も年齢も国籍も性自認も知らない。2人で会うときはたいていプログラミングや数学のクイズで遊んでいる。
梨沙は22歳。アルコール依存症の母の事故死がきっかけで、中学生で自傷癖が出た。カウンセラーのすすめでVRのアプリを知ったのだ。ある日、レゴラスから「まずいことになった」とメッセージが来た。(表題作)
暗号通貨、SNSなど、新しいテクノロジーと共生する人びとを描く8編の小説。
(文藝春秋 1870円)