伝説ジャズ喫茶「ベイシー」に迫った映画 観客には若者も
監督の星野哲也氏の本業はバー経営で、古くからベイシーと菅原マスターにほれ込んで東京から月イチで通い詰めていたほどの大ファン。計150時間もの取材記録は、途中からは大がかりな照明機材なども入れず自らカメラを回して撮影したという。
「こうしたミニマムな撮影スタイルと旧知の同業者ならではの安心感が、気難しいと噂の菅原氏から本音のトークを引き出したといえるでしょう。東日本大震災被災後の店内など、事あるごとに撮っていた自前の撮影素材を持っていた点も、長年の常連客だったからこその強み。そんな星野監督は、どうしても店内の音響を再現したくて、米アカデミー科学技術賞を受賞するなど世界最高といわれるNagraのアナログ機材でわざわざ録音したとか。職業監督ではないからこその、妥協知らずのこだわりと情熱を感じます」(前田氏)
店主こだわりのレコードを聴かせるジャズ喫茶の文化は、日本にしか存在しないといわれる。和風奇譚の「鬼滅」ともども、日本ならではの文化へのこだわりが、映画館へ観客を呼び戻している。