重大病予防の根拠なし…健康診断「新基準値」の怪しさ
日本人間ドック学会が4月4日、学会が定めた検査基準の数値が厳し過ぎるとの研究結果を発表した。
メタボ検診がそうだったように、検査数値のハードルが厳しいという指摘は以前からあったが、だからといって、「やっぱり、基準を緩めます」なんて話は聞いたことがない。厳しい基準と緩い基準、どっちを信じればいいのか。
人間ドック学会が打ち出した新基準は、表の通り。たとえば、「130未満」を正常としていた拡張期血圧の基準は、「147未満」に上ブレする。総コレステロール値と悪玉のLDLコレステロール値については、男性の場合、どちらも上限が50以上ハネ上がる。
基準値の上限が引き上げられると、従来基準で「異常アリ」でも新基準で「異常ナシ」になるようなグレーゾーンが存在するようになる。このあたりの数値の人は、ちょっと心配だろう。
■「治療は不要」と軽く考えない
東京都健康長寿医療センター・桑島巌顧問(高血圧外来)が言う。
「ハッキリいって、新基準は信用できません。なぜかというと、新基準の根拠となった分析対象が怪しいのです。学会の発表では、11年に人間ドックを受けた約150万人のうち、病気にかかっていなくて、薬を飲んでいない極めて健康な男女約1万人を対象に分析したといいます。では、そういう人たちが今後5年、10年たって、心筋梗塞や脳卒中を起こさない保証があるかというと、ありません。つまり、新基準には、重大病を予防する根拠がないのです」