助かった患者に共通点 大動脈瘤で死なない3つのポイント
後者で、渡邊総長が実施しているのが「体温を32度に保ち手術を行う方法」だ。
「人工血管置換術では、体温を低く下げた方が脳梗塞などの合併症を起こしにくいと考えられ、かつては20度程度、最近では25~28度に保つのが主流です。しかしそこまで体温を低くすると、脳の血管が縮んで脳梗塞を起こしやすいという研究報告があり、最も安全に手術が行える体温として、私は32度に保っているのです」
32度のグループ23人と、25度のグループ27人で比較した研究では、前者の方が手術時間が2時間以上短く、出血量が少なく、入院期間が短かった。手術の合併症で起こる脳梗塞は、32度のグループは0人だったが、25度では5人いた。
「ただし、32度では30分以内に血管の吻合を終えないと肝臓や腎臓などの臓器にダメージを与える。30分以内に終えようと思ったら、高い技術が要求されるため、なかなか普及していません」
大がかりな手術だけに「どの治療を、どこで受けるか」も重要事項であることは間違いない。大動脈瘤の治療を受けるなら、少なくとも病院の手術件数と治療成績は事前に調べるべきだ。