「バチスタ手術」は決定的な外科治療とはいえなかった
心臓移植しか残された道がない患者さんにとって最後の希望ともなり得るドラマチックな術式なので話題になりましたが、拡張型心筋症を完治させるような決定的な治療ではなかったということです。あくまでも、心臓移植までの“つなぎ”としての延命治療だといえるでしょう。
ただ、こうした歴史の中で、新たな治療法も進歩しています。薬物治療がそのひとつです。心臓の働きを弱めて血圧を下げるβ遮断薬を使って、拡張型心筋症の症状をコントロールできるケースがあることがわかってきました。
これまで、心臓の働きが悪い患者さんに対しては、「心臓の働きを抑制する治療薬を用いることはよろしくない」といわれていました。
しかし、β遮断薬を使って心臓の働きを弱めることによって、左心室の張り具合を改善できることが認められました。血圧が下がって僧帽弁の逆流も減らせる副次効果もあります。
拡張型心筋症はいまも研究が続けられ、治療法も日進月歩で発展しているのです。