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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

アルコール分解酵素に地域差 近畿と中部に下戸が多い理由

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 北海道、東北、九州はイメージ的に飲める人が多い地方とされますが、遺伝学的に証明されているのです。近畿には、京都の伏見や兵庫の灘など有名な酒どころが点在します。では、なぜ近畿には、変異型が多いのでしょうか。

 ALDH2の変異型が生まれたのは、2万5000年から3万年前。場所は、北アジアのどこかで、新モンゴロイドの体内で発生した突然変異にさかのぼると推測されています。

 日本人のルーツは、1万年以上前から日本列島に住んでいた縄文人と、約2000年前に朝鮮半島からやってきた新モンゴロイドの弥生人との混血です。アイヌや縄文人は、シベリアやフィリピン、ニューギニアなどの先住民の系統に属する旧モンゴロイドで、新モンゴロイドとは区別されます。

 当時は、お酒がありませんでした。ALDH2の遺伝子変異は、生存上のマイナスにならないため、淘汰されず、受け継がれていったのです。

 弥生人は、稲作を通じて高度な文化を育みました。大和朝廷がどこにあったのかは諸説ありますが、ALDH2の変異の分布を加味すると、近畿を後押しする材料になると考えてもいいかもしれません。

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