緩和医療の前に期待 がん眠らせ長期共存「休眠療法」とは
精巣がんや卵巣がんなど抗がん剤がよく効く一部のがんを除き、抗がん剤治療は「転移などがあり、がん全てを手術で切除するのは困難」という場合に行われる。
「標準治療での抗がん剤の目的はがんの縮小。しかしそれが生存期間の延長にはつながらないことが研究で分かっています。私が考えたのは、血管新生を阻害してがんの増殖や進行を抑制するのと同様に、抗がん剤でがんの増殖や進行を抑制する方法でした」
研究を進める中で、「抗がん剤の継続投与でがんの増殖・進行を抑制する期間を延ばせる」と判明。そのためには副作用が軽い投与量でなければならず、副作用の強さを示す「骨髄抑制」のグレード2(中等度)が最適だと導き出した。骨髄抑制はグレード1(軽度)~5(死亡)の5段階で、標準治療では3~4も珍しくない。3は「高度の副作用で入院、侵襲的治療、輸血、手術などを要す」、4は「生命を脅かす、または集中治療や緊急処置を要する」で、継続投与は困難だ。
さらに従来の抗がん剤治療では、年齢、がんの状態にかかわらず、身長・体重で一律に投与量を決定。それでは量が多すぎる上、「抗がん剤が効く量には個人差がある」ことも分かった。血液検査や画像検査などを駆使しながら、各患者の“効く量”を探る。