成長ホルモン補充療法は専門医による治療以外は危険
ところが何らかの原因(先天的障害や脳腫瘍など)で思春期以前に成長ホルモンの分泌が不足すると、体が大きくならずに停止してしまう「成長ホルモン分泌不全性低身長症(小人症)」になる。逆に、思春期以前に分泌が過剰になると、体が異常に大きくなる「巨人症」になるという。
では、思春期を過ぎてから成長ホルモンの分泌が過剰になったり、不足したりしたら、どのような変化が表れるのか。分泌過剰は、下垂体に腺腫(良性腫瘍)ができると起こるという。
「思春期以降は『先端巨大症』になります。骨が伸びることはないが、骨端部の骨形成が起こり、軟部組織の増殖・肥大も進む。そのため額や下顎が突出し、鼻や唇が大きくなる特有の顔になります。手や足の指も大きくなる。高血圧や糖尿病も伴いやすくなります」
また、先端巨大症は、がんになりやすい特徴がある。成長ホルモンによって増えるIGF―Iは細胞の増殖を促すからだ。
一方、思春期以降に頭蓋内の疾患などで成長ホルモンの分泌が低下すると、疲労感や体力・気力低下、うつ状態などが出現するという。この場合、成長ホルモンを注射で補充する治療法がある。
「成長ホルモンの補充療法は専門医による治療以外で、抗加齢効果や運動能力の向上を期待した間違った使い方は危険です。がんや心血管障害を発症する可能性があるので要注意です」