「断酒」か「減酒」かを選択 変わるアルコール依存症治療
■飲んで死ぬか、やめて生きるか…ではなくなった
この「レグテクト」に続き、今年3月に発売された新薬「セリンクロ」は、飲酒欲求を抑制しつつ飲酒量を低減する「減酒薬」。選択的オピオイド受容体調節薬と呼ばれるもので、μオピオイド受容体とκオピオイド受容体に主に作用し、シグナル伝達を調節。「レグテクト」と同様に、服用時に飲酒しても抗酒剤のように苦しまない。
「レグテクトやセリンクロによって、『減酒』という選択肢ができました。『飲んで死ぬか、やめて生きるか』の二者択一ではなく、患者さんに最初に『断酒』と『減酒』を選んでもらう。治療の過程で減酒では難しそうであれば、治療方針を断酒に切り替える。まずは治療につながることを重視する。当院では今そのようにアルコール依存症の対応を行っていますし、ほかにもそういった医療機関が出てきていると聞いています」
断酒率にこだわれば、治療の動機づけが低い人を排除し、断酒意欲の高い人のみを治療対象とする方がいい。しかし、それでは“動機づけの高い患者”しか治療を継続できない。