「しっかりしてよ」励ましの言葉が認知症の人を傷つける
このほかにもたくさんあるが、いずれも「励ましの言葉」である。家族は昔の元気な姿を覚えている。その一方で、現実の父親は昔の姿からどんどん遠ざかっていく。家族にすれば、症状が進んでほしくない一心で、つい言ってしまうのである。「こうした言葉に当事者が傷つく」と言えば「そんなバカな」と思うかもしれないが、当事者にすれば記憶が失われていく不安におののいているのに、優しい言葉をかけてくれるどころか、ああでもない、こうでもないと叱るばっかりで、「理由もなしになんで私を責めるんだ」と憤りを感じているのだ。
認知症の人にとって「また」とか「なぜ」と言われても、自分自身でも分からない。それが認知症だからである。分からないのに指摘されて傷つき、自分の行動に自信を失い、イライラし始める。やがて、精神的に限界がくると大声が出てしまうのである。