子宮頸がんワクチン1回目の摂取で生理が来なくなりました
高2の5月には、階段で失神し転落、右手首を剥離骨折した。教室でも頻繁に倒れるようになり、頭痛やめまい、耳鳴りなどさまざまな症状が出始め、記憶障害から成績も徐々に落ちていった。
「自分の体はどうなってしまうのだろうか」という不安な気持ちを抑えるため体調が悪くても勉強したが、高3の秋には通学できないほど悪化し、現役での進学は諦めた。
運動障害に加え、自律神経症状や高次脳機能障害など次々と症状が表れ、診断と治療を求め、25以上の医療機関をまわった。そのころは杖なしでは歩けなくなり、外出には車椅子が必要となっていた。
発症から3年後には、ワクチンが原因の「免疫介在性脳症」と診断され、15年から鹿児島大学病院で年4回ほど入院し血液浄化療法を受けている。16年、酒井さんは副作用を認めようとしない国と製薬企業2社に対する集団訴訟を提起した。120人の原告は、責任の明確化や医療支援、就学・就労支援などの恒久的な救済と再発防止策を求めている。
17年5月以降、酒井さんは自力で寝返りもできなくなり、日常生活のすべてに介助を必要としている。昨年には父が急逝し、介護や遠方への通院など、家族の経済的・身体的負担も大きい。現在、大学4年生だ。
「進路変更は余儀なくされたけれども、大学で学んでいる福祉も面白い。社会人になった友人を見ると、自分は将来働けるのだろうか、悔しさや不安が募る。けれどこれから先の人生を諦めるわけにはいかない。製薬会社が情報開示し、一日も早く治療法を確立してほしい。全国にいる被害者が、地元で治療を受けられることを願っています」
薬害は遠い世界で起きている問題ではなく、自分の生活と隣り合わせにあると訴え続けている。
(ジャーナリスト・渡辺輝乃)