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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

厚労省が保険適用検討へ「乳がん予防切除」普及への課題

公開日: 更新日:

 乳がんで亡くなる人が減るかもしれません。日本乳癌学会などは、遺伝性乳がんの予防切除を保険診療の対象にするように求めていて、厚労省も検討を始める方針なのです。

 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構の調査によると、2015年9月から16年8月までの1年間に乳がんの遺伝子検査を受けたのは1527人。そのうち、297人に遺伝子変異があり、49人が将来のがん化を見越して、がんのない方の乳房の乳腺を予防的に切除する手術を受けていたといいます。遺伝子変異のある人の6人に1人の計算です。

 乳がんは、毎年約9万5000人が新たに発症していて、女性のがんで最多。乳がんの遺伝に関係するのは、「BRCA1」「BRCA2」の遺伝子で、それらに変異があるのは全体の3~5%と、全体から見ればわずかです。そんな遺伝性乳がんが世界的に注目されたのが、米女優アンジェリーナ・ジョリーさんの予防切除でしょう。

 ジョリーさんの場合、「BRCA1」に変異があったといいます。この変異による乳がんの生涯発症リスクは40~80%。「BRCA2」の生涯発症リスクは20~85%。100%ではないとはいえ、高率であるがゆえ、乳がん発症前に両方の乳房を予防切除しています。

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