膵がん根治を目指すには手術だが…80歳超の手術はアリか
膵がんを治すには手術が必要です。患者さん本人が希望し、患者さんの全身状態が許せば手術が検討されるのは当然です。しかし、患者さんが80歳を越えていたらどうでしょう。80歳時の平均余命はおよそ9~12年で年齢別死亡率は6%です。がん治療中に予期せぬ事態に陥り、亡くなる可能性も少なくありません。仮に手術が成功したとしても手術によるダメージにより平均余命を大きく超えて生存するのは難しいケースもあるかもしれません。
その意味では80歳の膵がん患者さんに根治目的の外科手術をするのが妥当か否かについては議論があります。「膵癌診療ガイドライン2019年版」では80歳以上の膵がん患者さんの症例を25例以上含む「後ろ向き」の臨床研究8編を抽出して論じています。後ろ向き研究とは過去の事象について研究するものをいい、研究を立案・開始してから生じる新たな事象について調査する研究を前向き研究といいます。症例対象研究は後ろ向き研究の代表例で、無作為化比較試験は前向き研究の代表例です。
それによると、80歳以上の膵がん患者さんはがん切除により予後は改善し、術後の合併症は若い世代と同じですが、手術後に他の病気で亡くなる率や肺炎が増えて生活の質が下がるとの結果でした。