飲み続けると事故リスクが上がる「抗不安薬」と「睡眠薬」
複数の診療科で重複する悪循環
ストレスケア日比谷クリニック院長の酒井和夫氏が言う。
「ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と抗不安薬は、複数の診療科で重複して処方されやすいことが問題です。たとえば、ある高齢者が腰や膝が痛くて眠れないと整形外科を受診したら痛み止めとともに処方され、内科で血圧が高くて不安感を訴えれば、同じく降圧剤と一緒に抗不安薬などを処方される可能性が高い。精神科医や心療内科医が必ずしもベンゾ系の薬をきちんと管理しながら処方しているとは限らないのです」
海外の研究では、ベンゾ系薬剤の服用による骨折リスクや交通事故のリスクも報告されている。フィンランドでは、認知症ではない高齢者約9万3000人を追跡。ベンゾ系の薬を服用しているグループは、していないグループに比べて大腿骨頚部骨折を起こすリスクが1.6倍高いことが判明した。
ベンゾ系の薬には、副作用のひとつとしてふらつきが知られている。それで転倒して、太ももの付け根を骨折すると、高齢者は寝たきりに直結。引きこもりの生活が、ひいては認知症を招く恐れは十分だろう。そうなるとさらにベンゾ系の抗不安薬を重ねる悪循環だ。
米国の研究では、ベンゾ系の薬を飲んでいる人は、飲んでいない人に比べて交通事故のリスクが2・2倍だったという。東池袋暴走事故の加害者がそのようであったかは分からないが、ベンゾ系の薬の副作用である傾眠や認知機能の低下が、運転時の判断力低下につながり、事故リスクを高めるのだろう。