新型コロナ肺炎「濃厚接触者」と家族が暮らす…5つの対策
新型コロナ肺炎に集団感染したクルーズ船の乗客が次々下船している。だが、「濃厚接触者」の下船は見通しが立っておらず、残された乗客のいら立ちは募るばかりだ。
国立感染症研究所が「自宅等での感染予防策」という文書を作成し警告を発している。家族の一員が新型コロナの感染が疑われる「濃厚接触者」であることを前提にしており、事態はそこまで切迫しているのだ。
国内の病院・診療所の病床数は約166万床(うち東京は約13万床)。国の対応に業を煮やしたのか、東京都は独自に都立病院の専用病床増床など約390億円の緊急対策事業を決めたが、感染が拡大したら満床になる可能性は高い。
濃厚接触者の夫、もしくは陽性だが症状の出ていない妻、または軽症の娘と自宅で一緒に暮らすことも考えなくてはいけない。
では、具体的にはどのように対策して暮らしていけばいいのか?
【手洗い】「水」で最低15秒間こする
予防の最大のものは、「手洗い」「消毒」だ。接触感染とはいっても、経路によって「直接接触」と「間接接触」の2種類がある。直接接触とは感染者の皮膚や粘膜に直接触れて感染することで、間接接触は感染者が使用した食器やドアノブなどに触れて感染することを指す。
新型コロナウイルスは接触感染、飛沫感染があり、中国からの報告では空気中に漂う飛沫で起こるエアロゾル感染(厚労省は否定的)の疑いもある。
この中で接触感染に関しては、手指衛生が効果的だ。CDC(米疾病対策センター)のガイドラインでは、手指衛生のポイントは「手洗い」「消毒」「保湿」の3つになる。
まずは手洗いだが、流水で十分に両手を濡らす。温水は皮膚炎のリスクが増加するため避けるとなっている。
せっけんを両手の全部に行き渡らせたら、「最低15秒間」「両手を激しく」こすり合わせる。水ですすいだ後は、繰り返し使用される布タオルではなく、ペーパータオルで拭く。そしてそのペーパータオルで蛇口を閉じる。
【アルコール消毒】必ず乾いた手で
アルコール消毒は手洗いの逆だ。必ず乾いた手で行う。一般的にはワンプッシュの人が多いが、CDCは15秒以上すり込んでも乾かない量を適量としている。アルコール液が指の先から滴り落ちるくらいの量が基準になる。それが乾くまで、指先や指の股の部分までこすり続ける。
最後は肌荒れの皮膚で雑菌が繁殖しないようにローションやクリームで保湿する。
「医療関係者を想定して作成したものですが、濃厚接触者と同居している者には、サージカルマスク(外科用のマスク)と手指衛生を順守するよう伝えるとしています」(国立感染症研究所)
手洗いのタイミングはどうか。WHO(世界保健機関)の医療従事者向けのガイダンスが、感染者と暮らす家庭の対応に当てはまる。「ベッドの移動、握手、食事介護」など感染者と接触した際はその都度やる。食事や歯磨き前も行うとしている。
【服装と洗濯】ゴーグルとマスク、手袋を
日本環境感染学会が新型コロナ予防策を公表している。やはり医療者向けだが、「エアロゾルが発生しやすい状況では、ゴーグル、ガウン(医療用のビニールカッパ)、手袋、N95マスクの装着が推奨される」としている。全身防護服は必要がない。
咳き込む家族のいる部屋に食事を持っていく際は、スキーのゴーグルと使い捨てのキッチン手袋で代用できるだろう。
「自宅での対策については厚生労働省と同じ見解ですが、廃棄物処理、リネン類、衣類などの洗濯は通常通りでよいとなってます」(国立感染症研究所)
【部屋の換気】病院の「陰圧室」原理とは
病院では室内の気圧を低くした「陰圧室」に患者を隔離する。空気は気圧の高いところから低いところへ流れるので、陰圧室の空気は外部に流出しにくくなるというわけだ。
これと同じ現象が気密性の高いマンションでも見られる。玄関のドアを開ける際、非常に重く感じることがあるが、これは室内の気圧が低いから起こる現象で、この状態を負圧という。
「給気口」を開けると気圧が安定して収まるが、冬は寒いからと給気口を閉じている家庭も多く、ドアが重く感じられることがある。
トイレや風呂場などの換気扇を回し続けている部屋も負圧になるが、逆に喫煙ルームはこの原理を利用して煙が外に逃げないようにしている。
ウイルスを他の部屋に流出させないためなら、「給気口」を閉じるという手もある。ただし、対策としては一般的ではない。
「陰圧室での対応が難しい場合は、室内の換気を適切に行います」(日本環境感染学会)
窓の換気をこまめにした方が早い。
【殺菌と加熱】85度以上で1分以上加熱
新型コロナはアルコールに弱いことがわかっている。WHOによると、「糞便中に感染性のあるウイルス粒子は検出されていない」という。下痢症状などで便器が汚れた場合は、次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)を250倍に薄めて拭くとよく、家族全員に症状がない場合は、とくに拭き掃除をする必要もない。
また、耐熱性のあるノロウイルスでも85度以上で1分以上加熱すると死滅する。ウイルス対策に万全を期したいという家庭は、鍋料理や加熱調理を心掛けたい。
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