日本人が新型コロナウイルスに強い理由は?ゲノム学者が解説
新型コロナウイルスは細胞に感染するために、アンジオテンシン変換酵素(ACE)2というタンパク質を利用する。このACE2はアンジオテンシンⅡという血圧上昇に関与するペプチド(短いタンパク質)からアミノ酸を1つ取り除き、アンジオテンシン1―7というそれと拮抗するペプチドに変換する機能を持つ。すなわち、新型コロナウイルスが感染するための入り口は血管を構成する細胞にもたくさん存在する。今後はこのような視点から治療法の研究が進むことが考えられる。
そして私たちの遺伝子に存在するわずかな違いが、新型コロナウイルス感染症の重症化などに関連するのではないかという研究が世界各国で進んでおり、今後関連が明らかになるだろう。また、糖尿病や心臓・呼吸器の基礎疾患がある患者は重症化のリスクが高いことが、中国を中心に世界各地から報告されている。その他、喫煙の習慣や肥満などもリスクファクターとして指摘されている。加えて、マスクをつける習慣や靴を履いたまま家の中を歩かないことなど、さまざまな生活習慣の違いも関連する可能性はある。
おそらく最も関連することとして、医療体制、政府や専門家委員によるさまざまな対策とそのタイミング、それらを受けて日々生活を送っている、私たち一人一人の生活変容が功を奏していると考えられる。