夏は冬より免疫力ダウン?「長生き呼吸法」で強い体を作る

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 新型コロナウイルスをきっかけに、何かと話題になっている「免疫力」。外から侵入した細菌やウイルスと戦い、体内で発生したがん細胞などの体に害をなす細胞を撃退するなど、私たちが病気にかからないために日夜働いてくれている。実はこの免疫力、季節の移り変わりで変動することはあまり知られていない。

 夏と冬、免疫力が低くなるのはどちらかご存知だろうか? 答えは「夏」。意外にも、これからの季節なのである。

 一見、風邪にかかりやすい冬のほうが免疫力が低そうに思えるが、それは間違い。そもそも北半球で四季のある地域に生息している動物たちは、冬の寒さに耐えるため、秋に栄養をためこみ、免疫力を高めるという身体機能を持っている。そのため、秋から冬にかけての免疫力がいちばん高い。そして、活動量を減らして冬眠に入る。

 同じように人間も冬は免疫力が高いが、動物とは異なり冬眠をしないため、ウイルスや細菌に接する機会(感染リスク)が減少せずに感染が増えてしてしまうのだ。

■血流悪化は免疫力を下げる原因

 夏になると、状況はさらに油断ならない。ただでさえ低めに設定されている免疫力が、冷房による寒暖差、マスク着用による浅い呼吸、夏バテによる食欲不振などによって低下していく。そんな時にウイルスに感染したら深刻な事態に陥りかねないだろう。

「自律神経を整える『長生き呼吸法』」(アスコム)を刊行した、順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、「免疫力をアップさせるには、自律神経のバランスを整えて、全身の血流をアップさせることが大切だ」と話す。

「人間の血管は、毛細血管を合わせると地球2周半もの長さになるといわれています。この毛細血管のすべてに自律神経が沿って走り、全身の血液の流れをコントロールしています。そのため、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが乱れると、血液の流れが悪くなってしまうので要注意。血流の悪化は、免疫力を下げる原因。そこで、意識していただきたいのが、毎日の『呼吸』です」

 小林氏によると、ゆっくりと深く呼吸をすれば、自律神経のバランスが整い、全身の血流量がアップするという。血管には躍動感と柔軟性が生まれ、免疫細胞を含めた全身の細胞が活性化するそうだ。

「私の研究では、ゆっくりと深く呼吸をすることで、すぐに毛細血管の血流量がアップすることを確認しています。つまり呼吸には、一瞬で体の状態を変える力があるのです。呼吸法ほど即効性の高い健康法はありません。何か不安を感じたとき、深呼吸をすると心が落ち着きますが、それは気のせいではなく、呼吸によって自律神経のバランスが整うからなのです」

 われわれは1日に2万回以上も呼吸している。しかし、無意識にできてしまうため、ついおざなりにしがちだ。不安やストレスが強い人は、日常的に浅くて速い呼吸になっていて、それが原因で血流が不足し、免疫力が下がっている人が多いそうだ。また、マスクを着用する機会が増えている今は、浅い呼吸になっている人が多く、特に注意が必要とのこと。

 そこで小林氏は、呼吸の質を高めるための方法「長生き呼吸法」を考案した。1日1分行うだけで、だれでも質のいい呼吸ができるようになるという。

■基本の「長生き呼吸法」のやり方

・6秒、口から吐く(上体を前に倒しながら。腰に当てた両手で、脇腹の肉をおへそに集めるイメージで力を入れ、腸に刺激を与える)

・3秒、鼻から吸う(背中を反らしながら。腸に刺激を与えていた両手の力をゆるめる)

「『長生き呼吸法』の特徴は大きく2つあります。1つは『吐く時間を長くする』こと。もう1つは『腸をマッサージしながら呼吸する』ことです。吐く時間を長くすると、リラックス効果をもたらす副交感神経が刺激されて、自律神経のバランスを整えることができます。また、同時に腸をマッサージすることで、腸の働きを改善して、質のいい血液を生み出し、全身の血流をスムーズにすることができます。腸は全身の免疫機能も司っているため、免疫力のアップが期待できるでしょう。これらの結果、不安やストレスの解消はもちろん、疲労回復やさまざまな生活習慣病も改善することもできるのです」

「長生き呼吸法」を実践してみると、始めたその日から頭がスッキリして、森の中にいるような爽快な気分を味わえる。仕事や家事のすきま時間に行うと、てっとり早くリフレッシュ効果を得られるので、不調や不安をリセットするための味方になってくれそうだ。呼吸をするだけだから、お金がかからず、いつでもどこでも行えるのもうれしい。

 新型コロナによる休業要請が全面的に解除され、他県をまたいでの移動も可能になった。しかし、人の活動量が増えることで、感染の機会が増えているのも事実。万一、感染した際に取り返しのつかないことにならないよう、免疫力をアップさせる「長生き呼吸法」をさりげなく生活の中に取り入れてはどうだろうか。

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