もう一つのコロナワクチン ウイルスベクターの期待と課題
とはいえ、まだまだ課題が残っている。運搬役のアデノウイルス自体に毒性があり、弱毒化したとしても発熱などの風邪症状を引き起こすケースが報告されている。また、すでに製品化されているアデノウイルスベクターの遺伝子治療薬では、副作用の肝機能障害による死亡例もある。
「さらに、体内では運搬役のアデノウイルスに対する抗体もできてしまいます。そのため、ワクチンを投与して効果が持続しなかった場合でも、一般的には2回目の投与は難しいと考えられます。アストラゼネカは、これまでの臨床試験で2回投与について評価していますが、慎重に判断する必要があります」(神崎氏)
アストラゼネカのウイルスベクターワクチンは、英国、米国、ブラジル、南アフリカに加え、日本でも臨床試験が行われている。年内には中国でも治験が始まるという。
mRNAワクチンと同じく、こちらも新しい技術によるワクチンだけに、今後の製薬界にとって大きな転換点になるかもしれない。