認知症で療養型施設に入居している患者の搬送が増えている
救急搬送された時点で、患者さんのご家族に「手術をするか、しないか」についてあらためて意思を確認します。そうした患者さんは認知症があるため、緊急手術の対象になるケースは少なく、そのまま天寿を全うする形がほとんどです。しかし、急性期病院側が「手術しないと、このまま死んでしまいますよ」といったように、手術を受けるような方向に強く誘導すれば、「先生方にお任せします」といった返事につながり、多くは緊急手術が行われることになります。
心臓の病状だけを見れば、明らかに手術適応です。しかし、患者さんの年齢や全身状態、認知症の程度を考えると、たとえ手術をして命を救えたとしても、認知機能が失われたまま手術による身体的な苦痛が残ってしまう可能性が高い場合がほとんどです。その後の人生を考慮すると、患者さんにとって手術がベストな選択とはいえません。身体的に傷がついた寝たきり状態の高齢者を増やすことになってしまうのです。さらに、そうした患者さんには大きなマンパワーが投入されるケースが多く、結果として医療費も高額となり医療財源の面でも大きな負担がかかります。
■循環器の分野でもベスト・サポーティブ・ケアがある