年間2000人が被害に…「マムシ咬傷」での致死率は0.8%
腫脹が手首ないし足首までにとどまっていればグレードⅡ。とはいえ、たとえば手を噛まれたとすると、スキー用の手袋をはめたくらいに腫れあがる。しかも噛まれた部位は、内出血を起こして青紫色に変色することも多く、かなり衝撃的な見た目になるという。
さらにグレードⅢでは、肘ないし膝関節まで腫脹が広がる。グレードⅣは一肢全体、つまり噛まれた側の腕または脚全体が腫れる状態。そして最も重いグレードVでは、腫脹が体幹にまで達する。右手を噛まれたとすると、腫れが右肩を超えて肩甲骨辺りにまで達するという。
「腫脹がひどいと筋肉にかかる内圧が上がり、血行不全から壊死に至る(コンパートメント症候群)ことがあるため、予防的に皮膚を切開するケースもあります(減張切開)。腫脹のピークは、噛まれてから24~48時間後。それを過ぎると少しずつ腫れが引いていきますが、完全に引くまでには2週間から1カ月程度を要します」
重症化すると筋肉が溶けて(横紋筋融解症)、いわゆる血尿が出る場合がある。
「人によっては急性腎不全を起こすこともあります。また播種性血管内凝固症候群(DIC)といって、血小板の数が減り、消化管から出血が起こり、吐血することもまれですが報告されています。マムシ毒には血小板を凝集させる成分が含まれているため、正常な血小板が急激に減ってしまい、出血しやすくなるのです。重症化の割合は、患者の2%前後とされています」