「マムシ咬傷」の治療法は医師任せ 抗血清の使用は5~6割
肝心の抗血清は、「グレードⅢ(腫脹が肘または膝まで広がった状態)以上に達したら使用せよ」と、フローチャートや多くの文献で推奨されている。
グレードⅢ以上になると、患部だけでなく腎臓や肺に障害が出て、入院期間が長期化することが多いのだが、抗血清を投与することによりさらなる悪化を抑え、入院期間を短縮できるとされている。
「ところが数年前にある地方の中核病院から出された論文によれば、過去7年半に診たグレードⅢ以上の36例に対して、抗血清も破傷風トキソイドも打たなかったにもかかわらず、全員が内臓障害もなく完治して退院したそうです。抗血清の評価もまだまだ定まっていないのが現状です」
むろん、抗血清を打たないと本当に危ないというケースはある。それはマムシの牙が運悪く血管に刺さり、毒が血液中に直接打ち込まれた場合だ。アッという間に全身に回るため、咬まれた直後から頭痛、目まい、呼吸不全などが生じ、同時にDIC(正常な血小板が減少する症状)を起こして創口から血が止まらなくなるなど、急性の症状が表れる。
「こうしたケースでは、抗血清を打つと確実に症状が改善していくことが知られている。マムシに限れば、抗血清は患者の状態とタイミングが大切ということでしょう」