“ノー残業”なのに質の高い医療を多くの患者にできる理由
いま政府が推進する働き方改革のもと、医療従事者の労働環境も大きく見直されようとしています。一般企業ではすでに始まっている時間外労働の上限規制が、2024年4月から医師にも厳格に適用されることとなり、勤務医の時間外労働時間は原則、年間960時間までとなります。
多くの医療機関ではこの医師の労働時間の上限規制に対してどう対策を取ろうか、今から悩ましい状況となっています。というのもこれまでの日本の医療は、医師の長時間労働により支えられてきたから。この場合、必ずしも医師が患者さんやそのご家族と多くの時間を割いて関わっているから……というわけでなく、ほかの業務に時間を取られて診察時間が短縮され、長時間労働なのに患者さんやご家族とコミュニケーションを取る時間が十分に取れない、となっていました。
では、在宅医療の現場ではどうでしょうか? 当院の場合、9~18時の勤務時間内で、医師はきっちり仕事を終えています。しかし、患者さんは毎日12人程度、多い時は16人を診察することもあります。
だからといって玄関先で処方箋を渡して「はい終わり、お大事に」なんてことはなく、必ず部屋に伺い、患者さんやご家族とお話をし、診察、処置や投薬、不安や疑問の解消に努めます。