SNSでの精子提供の急増と個人間の取引に潜む大きなリスク
通常、医療機関では感染症について十分にチェックを行ってから精子を提供しています。慶應義塾大学病院では提供された精子はいったん凍結し、感染直後ではすぐに陽性とならない場合があるため、半年間に渡って2回提供者の感染症をチェックし、陰性が確認された提供者の精子のみを使用しています。また、人工授精の際に雑菌などが一緒に入らないよう提供された精液は洗浄を行います。
このような感染症検査や洗浄を行っていない個人間の取引で得られた精子を利用すると、感染症のリスクが非常に高くなります。また、提供者が自分の経歴を詐称している場合があり、高学歴な提供者を望んでも、得られた精子がまったく異なる学歴の方からだったというケースも存在し、個人間取引での精子提供はさまざまなリスクをはらんでいるのです。
このような現状の中で、日本にも海外の「精子バンク」が参入してきています。提供者にもよりますが、安いものであれば50ユーロくらいから個人でも精子の購入が可能になっています。購入した精子をシリンジ法で自分の膣内に注入する、あるいは産婦人科のクリニックに持ち込んで人工授精を受けている患者さんもいます。
無精子症の患者さんだけでなく、お子さんがほしいレズビアンカップルなどこういった提供精子の需要は大きく、一刻も早く安全に精子提供が受けられる環境を作ることが必要な時代になっているのです。