ブヨに刺されたら…唾液を吸い出し、水で洗い流し、冷やす
1960年代まで、ブヨは全国的に生息していて、梅雨時から8月一杯まで人々を悩ませ続けていました。しかし1970年代を境に全国で激減。いまでは山奥の水辺などでしか見かけません。
というのも、彼らの幼虫は清流でしか暮らせないからです。少しでも水質が悪化すると、姿を消してしまいます。国交省の「生物学的水質判定」の指標生物に指定されているほどです。サワガニやトンボのヤゴなどとともに、水質Ⅰ級(きれいな水)の指標生物になっています。ちなみにⅡ級(ややきれいな水)にはゲンジボタルが属しています。ブヨは、ホタルよりも水質に敏感なのです。
古い資料を調べていくと「成城足」という言葉に行き当たりました。1950年代、東京都世田谷区成城において、当地の大学や短大に通う女学生の足に特徴的な赤い発疹が多く見られたというのです。その原因がブヨでした。つまり夏になると、女学生たちがよくブヨに刺されて、近隣の皮膚科を頻繁に受診していたわけです。
そこで地図を確認すると、成城地区は多摩川の支流である野川と仙川に挟まれた土地であることが分かります。その地で生まれ育った知り合いに聞いたところ、野川も仙川も、60年代まではホタルが普通に飛び交っていたそうです。それより前の50年代なら、文字通りの清流だったことでしょう。つまり2つの清流に挟まれた土地だったからこそ、女学生たちが「成城足」に悩まされていたわけですし、都内にもそんな場所が残っていた証拠にもなります。