なぜ公園でくつろぐ高齢者は蚊に刺されてもかゆく感じないのか
暑い日が続いています。日暮れ時、近所の公園で夕涼み、といきたいところです。しかし待ってましたとばかりに「蚊」が襲ってきます。虫よけスプレーはむせるから嫌いだし、蚊に刺されるのはもっとイヤなので、とぼとぼと引き返すしかありません。
ところがベンチに目をやると、元気なお年寄りたちが涼しい顔で、思い思いに寝転んだり雑談したりしています。すでにワクチン接種は終わっていて、コロナの心配が小さくなったのは分かりますが、いくら年寄りだからといって、蚊は手心を加えてはくれないはず。あるいは「老人の血は不味くて喰えない」と敬遠されているのでしょうか。
しかしそういえば、昔から「年寄りは蚊に刺されても痒くならない」と言われていたのを思い出します。じつはこれ、都市伝説などではなく本当の話です。体質にもよりますが、一般に高齢者の多くは、蚊による痒さをあまり感じなくなっているのです。加齢で神経が鈍っているからとか、そういったことではありません。もっと深い、免疫学的な理由があるのです。
蚊に刺されて腫れたり痒くなったりするのは、医学的には蚊刺症(ぶんししょう)と呼ばれています。蚊は吸血のために人を刺すわけですが、蚊の針(口吻)はたいへん細いため、そのままでは途中で血が固まって、詰まってしまいます。そのため針を肌に突き刺すと、最初に血液凝固を防ぐ成分を唾液に混ぜて打ち込んできます。血液をサラサラにして、吸いやすくするためです。ところが人体のほうが、この唾液に対するアレルギー反応を起こすので、蚊刺症の症状が現れるのです。