悲劇を生まないために「延命」「緩和」の意味を知っておく 在宅診療の名医が語る
患者の死期が近づくと、医師や家族が「延命」や「緩和」を口にする。しかし、その意味を十分理解しないと、患者はもちろん、その家族にとって看取(みと)りが苦痛になりかねない。1000人の在宅患者を抱え、毎年200人の看取りを行う「しろひげ在宅診療所」(東京・江戸川区)の山中光茂院長に話を聞いた。
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「この中で延命を希望しない人はどれくらいいますか?」
山中院長が在宅診療に関する講演会でこう質問をすると、多くの人が手を挙げるという。ところが、「じゃあ、ここで暴漢が入ってきてあなたの胸をぐさっと刺しても、私はニコニコ見守らせてもらいますね」と話すと、笑いが起きて「それはまた違うでしょ」との声が必ず上がるという。
「同じ延命でも、“老化”による全身の衰えで寿命が尽きる直前の場合と、“病気”により一部の機能が衰えてしまう場合への対応ではまったく意味が異なります。私の質問と返しに笑いが起きるのは、多くの人がその違いを知っているからです。ところが実際の医療現場では、患者の家族は死んで欲しくないとの強い思いから2つの延命が混同され、悲劇を生むことがある。注意が必要です」