赤ちゃんが生まれる一歩手前の「切迫早産」に注目の新治療が
日本ではまだ保険適用外だが…
子宮頚管ペッサリーは、子宮頚管の周囲にフィットするように装着させ、子宮内の赤ちゃんを支えて切迫早産を予防する器具だ。子宮頚管ペッサリーは日本ではまだ一般的ではなく保険適用外だが、欧州では早産防止効果が認められており、関連の論文も複数発表されている。
「最初の患者さんは、陣痛がきて破水したら緊急で帝王切開をしなければならない方でした。入院管理をしていたのですが、小さいお子さんがいるため、どうしても帰りたいとおっしゃる。状態は落ち着いていたものの、頚管長短縮があり、帰宅か入院続行か悩ましい状況。そこで子宮頚管ペッサリーを提案。承諾を得られたので、この治療を行いました」
結果、早産にならず、予定日通りの出産となった。佐々木医長は5例の子宮頚管ペッサリー治療を行い、7月の日本周産期・新生児医学会学術集会で発表し、注目を集めた。5例はいずれも、「頚管長短縮で切迫早産と診断」「破水がない」「明らかな感染兆候や痛みのある子宮収縮がない」場合が対象で、まずは入院管理で適応を判断し、インフォームドコンセントの上、同意を得た後に実施した。
「5例のうち、胎胞脱出(赤ちゃんを包む膜が子宮口から出ている)が見られなかった3例は、子宮頚管ペッサリーの挿入で安心感を持って外来管理が可能で、予定日通りの出産となりました。一方、胎胞脱出が見られた例では、正期産までの妊娠継続ができず、ひとりは完全破水、もうひとりは陣痛が起こり早産に至りました」
ただ、子宮頚管ペッサリーを使用しての苦痛、違和感などはなく、有害事象もなし。
患者への負担が少ない治療であることは確認された。
今後さらなる症例の蓄積が必要ではあるものの、「子宮収縮を伴わない頚管長短縮で、胎胞脱出が見られない切迫早産に対しては、子宮頚管ペッサリー治療で外来管理が期待できる」と佐々木医長は話す。