MICSを受けるなら1人の執刀医が集中して手術を行っている病院が望ましい
このような安全管理の不備は、患者さんに直接の大きな被害が出ない「ヒヤリ・ハット」の時点で解決しておくことで大きな事故を防ぐ効果につながることが明らかになっていて、いくら技術的に優秀な医師でも同様な対応が求められます。
■画像診断の支援が極めて重要
じつは論文が投稿された心臓血管外科学会雑誌では、次号で学会の医療安全に強く関わったベテラン医師の総評が掲載されました。結果として通常の切開を用いた手術を施行していれば、死亡につながった心筋梗塞を引き起こす原因となったいくつかの問題は解決できていたはずといった結論で、海外の古い医師の発言や論文も引き合いに出していました。特筆すべきは術中録画の十分な検証が手術手技の安全性や確実性の検証に役立つという提言で、これには私も同感と感じた次第です。ただ、こうした総評は必ずMICSを安全・確実に行っている側の意見も同時掲載するべきで、学会雑誌の取るべき態度として不備があると感じざるをえませんでした。
MICSのような低侵襲な手術は、ひとつ間違えると「大侵襲」になってしまうのが怖いところです。切開が小さくなれば、それだけ視野が狭くなるため十分な点検ができなくなります。行った処置を振り返るのが難しいこともあり、ほんのちょっとしたほころびが大きなトラブルになるケースが十分にあるのです。