諦めないがん治療には「ハイパーサーミア療法」 負担が軽く高い効果
とはいえ、それだけではがん患者を救うことにはならない。そこで出合ったのがハイパーサーミア療法だったという。
「偶然、がんの論文でその存在を知り、これだ、と思いました。ハイパーサーミア療法は、がんの固まりが42.5度以上の熱に弱いという性質を利用してがんを治療します。具体的には体の外側からがん細胞に向かって高周波電流を流してがん細胞を加温し、死滅させる。この治療法が優れているのはがん細胞だけ選択的に攻撃し、正常細胞へのダメージはあってもごくわずか、という点です。正常細胞は熱が加わると周囲の血管が拡張して血流が増えて熱を逃がしますが、がん細胞の周囲の血管は急ごしらえの新生血管なので拡張ができずに熱がこもってしまう。そのため正常細胞より早く壊れるのです」
■抗がん剤や放射線治療の効果も高める
これなら、体力の弱い高齢者や女性でも受けられる。しかも、多くのがん種で治療可能だ。さらにこの治療法は抗がん剤や放射線治療の効果をアップさせる働きもある。
「加温すると細胞を覆う細胞膜の透過性を高めるため、がん細胞内への抗がん剤の取り込み量が増えて抗がん剤の効果を高めます。また、抗がん剤で攻撃されたがん細胞のDNA回復の動きを阻止する働きもあります」