著者のコラム一覧
奥真也医師、医学博士、経営学修士。医療未来学者

1962年大阪生まれ。東大医学部卒業後、フランス留学を経て埼玉医科大学総合医療センター放射線科准教授、会津大学教授などを務める。その後、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。著書に中高生向けの「未来の医療で働くあなたへ」(河出書房新社)、「人は死ねない」(晶文社)など。

心筋梗塞の診断と治療はどう変わる? 再生治療で心臓は半永久的に動き続ける

公開日: 更新日:

 ただし、この方法では細胞の調達に時間がかかり、早期治療が必要な心筋梗塞治療には課題が残る。そのため、ハイドロゲルなどの人工物を注入する治療法の開発も行われている。これは、心筋細胞は柔らかい基盤で誘導されやすいという性質を利用して、高分子のハイドロゲルを損傷した心筋の周囲に注入することで心筋再生を早めようとするやり方だ。

 さらに培養した心筋細胞を移植する治療法、患者の細胞を使って新たな心臓を作る技術開発も進んでいる。

 ②は現在、心筋梗塞の治療で最も多く行われている治療法で、薬物を使った血栓溶解療法、狭くなった血管をバルーンなどで広げてステントなどで維持する経皮的冠動脈インターベンション、詰まった血管を回避して健全な血管同士をつなぐ冠動脈バイパス手術などがある。20世紀終盤から2010年ごろにぐっと進み、最近も新たな技術開発が進んでいる。

 ただ、薬物による血栓溶解療法は、血栓が完全に溶け切らず血管内に残って再び血管が閉塞することもある。胃潰瘍などの出血性の病気がある場合は血栓溶解剤を使えない。経皮的冠動脈インターベンションや冠動脈バイパス手術も時間が経てば再狭窄の可能性がある。そもそも冠動脈は石灰化するとセメントのように硬くなる。それを解決するのが古くて新しいローターブレーター治療。工業用ダイヤモンドの粒子をちりばめた米粒大の高速回転ドリルを血管内で前後させ、病変部を削り取る。30年以上前の技術だが、この治療法も重要だ。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…