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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

コロナとマスク着用 「判断する」と「考え続ける」は相反する部分がある

公開日: 更新日:

 この判断について、正しい/正しくないという視点ではなく、その判断を棚上げして、どう考え続けるかということである。

「この判断は間違っている。マスク着用を個人の判断に委ねるなど時期尚早だ」という立場を明確にして反論しようが、「この判断は妥当なものだ。個人の判断こそが重要だ」という立場で擁護しようが、その態度を明確にすればするほど、自分の判断に都合のいい情報ばかりを集め、自分自身の判断をより強固にするようになって、思考が停止する。

 判断する、決断することと、考え続けることには相反する部分がある。いったん考えを止めなければ、判断ができないし、逆に考え続けるためには、判断を先送りする必要があるからだ。で、判断することと、考え続けることのどちらが重要かと問われれば、私自身を含め、一市民にとっては、考え続けることの方が重要ではないかというわけである。

 そういう意味で、「個人の判断で」という文言は、それぞれに考えることを促す、良い対応だとひとまず言えるかもしれない。このあいまいな日本政府の判断に対して、ロックダウンやマスクの義務化をしなくても感染対策が実現された成熟した社会だからこそ、という考えもある。

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