がんになったとき、患者や家族が感じる「心のつらさ」は3つある
進行したがんとなっての心のつらさ、家族としてのつらさは、つらい本人でなければ分からないことだと思います。
がんでの心のつらさには、少なくとも3つの種類があるように思われます。1つは「家族を失った場合」です。夫婦で暮らしていて、夫(妻)を失った方でのつらさです。長年連れ添って2人だけで暮らしていた、先週まで話せるパートナーがそばにいた。そのパートナーがいなくなって、話しかけても返事がない……お位牌の陰に逝ってしまったのです。
この時の喪失感は、並大抵のものではありません。毎日の食事、お茶碗もお皿も、自分ひとり分だけになってしまいました。洗濯機を回すにも、下着も自分のものだけになりました。仏壇の前で「もうすぐ私もそちらに行きますよ。隣の席を空けておいてください」とつぶやきます。そう言いながら、涙が止まらないのです。
つらさの2つ目は「自分自身のがんが進行した場合」で、体がつらくなり、自分自身で身の回りのことができなくなるつらさです。廊下の手すりをつたってトイレに行けていたのが、ひとりでベッドから立ち上がれなくなって行けなくなる、といった場合です。