がんになったとき、患者や家族が感じる「心のつらさ」は3つある
残りの3カ月、1日、1日減っていく。1日、1日を大切にと言われても、どう大切に過ごしたらいいのかが分からない。時は流れ、時代は進む。もう、娘、孫の時代なのだ。ずっと長く生きていられる人はいないのだ。
娘は昨日、私が好きだったうなぎを買ってきてくれた。
でも、せっかくなのに、あまりおいしいとは思わなかった。孫がおいしそうに残りを食べてくれた。それを見ているのがうれしかった。
あの世から、この孫の成長を見ていたい。死後の世界があると思うことで、時間の延長を図っている。それで希望を持てるようになるのだろうか? ずっと宗教を否定してきても、宗教には関係なく、あの世からこの世を見ていたい。心の中に自分だけの宗教があった方が、心は落ち着けるのかもしれない……。
これら3つは、どれもそれぞれにとてもつらいことだと思います。私たち医療者は、このような患者の心のつらさを知り、それを解決できない時は無力感を感じます。それでも、個々の患者の、それぞれのつらさを一生懸命に聞きながら、できるだけ理解したいと思っています。
もしかしたら、つらさを理解しようとしている者がそばにいる、心に寄り添ってくれている、ということだけでも患者の安らぎにつながるのかもしれない。そう、思っています。