認知症の排泄トラブルを予防する具体的な方法は?
一方で、介護する家族の負担が大きいのが便失禁です。認知症の妻を介護する旦那さんに、便失禁を徹底的に防いでいる方がいたので詳しく聞くと、まずは寝起き直後にコップ1杯の水を飲んでもらう。その後、朝食とともに冷たい牛乳を飲む。しばらくお腹をさすっているうちに胃腸の働きが活発化し便意が促されるタイミングでトイレに誘導するといいます。毎朝排便する習慣が身に付き、腸内環境も整い、便失禁を防げているそうです。
便失禁の頻度が増え、自力でトイレに行くのが難しくなった場合には紙おむつの着用を検討するといいでしょう。ただし、排泄後に長時間取り換えずに濡れたまま放置すると肌がかぶれたり、排泄物が臀部へ流れると、仙骨部分に褥瘡を引き起こしやすくなります。
また不快感から便を直接手で触り、その汚れを取ろうと衣類やタオルで拭いて2次被害が広がる「弄便」を引き起こしかねません。2時間に1回は排泄していないか確認し、排泄していたら速やかに取り換えましょう。その際、本人の尊厳を守るためにも目隠しのカーテンやバスタオルなどで周囲に見えないよう配慮を心がけてください。
▽朝田隆(あさだ・たかし) 1982年東京医科歯科大学医学部卒業、83年同大精神科、95年国立精神・神経センター武蔵病院、2001年筑波大学精神医学教授を経て、15年からメモリークリニックお茶の水院長、筑波大名誉教授、東京医科歯科大学特任教授を務める。