“治療”も気から…「プラセボ」は悪いわけではない
ではプラセボは臨床試験だけの話なのかというと、そうではありません。みなさんのほとんどは、なんらかの痛みがあるときに痛み止めのクスリを頓服として服用したことがあるのではないでしょうか? そのときに、服用して10分もしないうちに「あ、痛み止め効いてきた」と感じた経験があると思います。これもじつはプラセボ効果によるものです。
多くのクスリ(内服薬)は、服用して効果を発揮するまでに30分以上の時間を要します。クスリは、服用して、溶けて、吸収され、成分が体中に広がって(分布)、初めて効果を発揮するのです。この過程は10分程度で完了するものではなく、もっと時間がかかります。ですので、服用してすぐに効果を実感しているのは、クスリというよりは「クスリを使った安心感」からくるプラセボ効果によるところが大きいのです。
だからといって、プラセボが“悪い”わけではありません。暗示といった心の影響とはいえ、効果を実感できるのはさまざまな点でプラスになります。こんなことをいっている私自身も、クスリのプラセボ効果をしっかり享受しています。
「信じる者は救われる」という言葉があります。「病は気から」と同じように、「治療も気から」は大事といえるでしょう。みなさんは使っているクスリの効果を信じていますか? 強く信じたほうが、より効果が得られるかもしれませんよ。