「騒音」は考えている以上に心臓に悪影響を及ぼす
「騒音」は心臓にとって大敵になる──。今年8月末から英国のロンドンで開催された欧州心臓病学会年次総会で、そんな新たな研究が発表されました。
ドイツのブレーメン心臓血管研究所に急性心筋梗塞で入院した50歳以下の患者430人の居住地の騒音レベルを調べたところ、同地域に住む一般住民よりも高いレベルの騒音に暴露していることがわかったといいます。さらに、心血管疾患リスク因子のスコアが低リスクと判定される患者では、スコアが高い人に比べて騒音レベルが有意に高いことも判明しました。若年で心血管疾患リスクが低い人でも、騒音の悪影響によって急性心筋梗塞のリスクがアップした可能性が示されたのです。
またフランスで実施された別の研究も発表されました。急性心筋梗塞で入院し、28日以上生存していた患者864人を追跡調査したところ、入院から1年後の時点で19%の患者に主要心血管イベント(心臓突然死、心筋梗塞の再発、狭心症など)が発生していて、夜間の騒音レベルが10デシベル増加するごとにリスクが25%増加することが明らかになったといいます。
やはり、騒音は心臓疾患の発症リスクをアップさせる要因になるといえるでしょう。
騒音と心臓疾患の関係についての研究はこれまでも数多く行われていて、以前の米国心臓協会年次集会でも報告されています。米国・マサチューセッツ総合病院の研究によると、幹線道路沿いや空港周辺といった騒音レベルが高い環境に長期にわたり暴露され続けた人は、騒音レベルが低かった人に比べて心血管疾患の発症リスクが3倍以上に上りました。健康な成人男女499人を対象に、脳と全身の動脈のPET/CT画像を撮影し、米国運輸省の騒音データに照らし合わせて騒音レベルを評価。騒音レベルが高い環境に住む人は情緒管理機能中枢である脳の扁桃体の活動レベルが高く、動脈の炎症レベルも高いことがわかったそうです。
ほかにも、115デシベル以上の環境で20年以上にわたって耳栓なしで生活した場合、心筋梗塞が最大で1.6倍に増えると報告されていますし、WHO(世界保健機関)も1日平均65~70デシベルの騒音は心臓疾患を増加させるとしています。