がんの疑いが浮上して…脳外科医のDr.まあやさん卵巣腫瘍を振り返る
Dr.まあやさん(脳外科医・ファッションデザイナー/49歳)=胆石・卵巣腫瘍
病気になって、初めて「患者さんは術後、こんなにつらいのか」と、身をもって理解できました。
事の発端は2015年ごろに起こった当直中の腹痛です。もともと腹痛を起こしやすい子供で、医学部受験で猛勉強していたときも、胃痛になると医師である祖父に痛み止めの注射を打ってもらったりしていました。
そんな腹痛も医師になってからはほとんどなかったのですが、毎週末通っている釧路の病院で当直中に起こったのです。右季肋部(右腹部の肋骨の下辺り)の激しい痛みでした。
朝方、消化器科の先生に診てもらい、痛み止めを打って釧路から東京に戻ってきました。午後から神奈川の病院で外来と当直をするためです。でも、外来で勤務中に再び痛みが出て、そのまま入院。消化器科の友人夫妻にメールで症状を説明して「なんだと思う?」と聞いてみると、「まあやさんの体形と痛みの部位からして胆石なんじゃない?」と答えが返ってきました。
案の定、「2センチの胆石と砂状の石が胆嚢に沈殿している」という検査結果が出ました。胆嚢に沈殿している砂が膵管から膵臓に落ちて、膵臓が詰まると大変なことになるため、胆嚢を切除することを勧められました。
ですが、当時ちょうどデザイナー修業時代だったので多忙を極め、結局1年間も様子見してしまったのです。その間、激痛で苦しみながらタクシーに乗ることが何度もありました。病院に向かう途中、ドライバーさんが急ブレーキをかけたことで後部座席から落ちてしまい、その衝撃で石が動いて激痛が消えたことがあったり、旅行先で痛みが出て、地元の市民病院で「こんなこと、いつまで繰り返すのですか? なぜ早く手術しないのですか?」と説教されたことも……。
でも、そうこうしているうちに、胆石を超える大問題が発覚しました。「卵巣がんの疑い」が浮上したのです。
胆石を見つけたときの腹部MRIで卵巣嚢腫も見つかっていたのですが、「卵巣嚢腫は良性だから」と勝手に放置していたところ、友人の同期女性医師に「婦人科で精査してもらった方がいい」と諭され、改めて造影剤を入れたMRI検査をした結果、悪性の可能性が出てきたのです。
「私、がんなんだ」と、頭の上にドーンと大きな岩が落ちてきたような衝撃を受けました。
婦人科でがんの症例が多い病院を選び、画像を見てもらうと、「確かなことは手術をして調べてみないとわからないから、いずれにしても手術はした方がいい」と言われ、その方向で話が進みました。胆嚢もついでに取ってもらいたいと考えていたので、外科に行って頭を下げました。がん専門病院で単に胆嚢を切除する手術をお願いするのは本当に心苦しかった。でも快く引き受けてもらい、腹腔鏡での胆嚢切除のあと、婦人科にスイッチして卵巣の開腹手術という流れでやってもらえることになりました。