恨みを感じた人、出来事、自分…「ゆるせない」を「ゆるす」と見えること【後編】
「過去のよいおこない」を語る儀式
ゆるしについてのエピソードをもう一つ、ご紹介しましょう。これもアフリカの話です。
南アフリカのバベンバ族では、部族の誰かが不正をはたらいたり無責任な行動をとったりしたとき、村の真ん中に1人で座らなければなりません。もちろん、逃げられないような手だてが講じられます。
村人はみんな仕事をやめ、集まって輪になり、その人を囲みます。それから、子どもも含めた全員が1人ひとり、その人が過去にしたよいことについて話しはじめます。
その人について思い出せることすべてが、詳しく語られます。その人の長所、善行、親切な行為などのすべてを、輪になった一人ひとりが、詳しく語るのです。
◼️一体感を取り戻すこととゆるしがあるだけ
村人たちは、これ以上ない誠実さと愛を込めて話します。誇張もでっち上げもゆるされません。不誠実な態度や、皮肉な態度をとる人もいません。
その人を共同体のメンバーとしていかに尊敬しているか村人全員が話し終えるまで、この儀式は続きます。それは数日間に及ぶこともあります。最後に輪が崩されると、その人を部族に再び迎え入れるお祝いが始まります。