五輪後の新国立競技場を球技専用にして何が「レガシー」だ
この連載も最終回となった。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森(喜朗)会長は、今年11月に完成予定の新国立競技場(以下=新国立)を、日本スポーツの新しい「聖地」にしたいと言った。素晴らしい発言で尊敬したよ。ところがだ。五輪が終われば、「金にならない」という理由で陸上競技のトラックは撤去される。6万8000席の観客席は国内最大規模の8万席となり、サッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムに生まれ変わる。元陸連会長の河野洋平さんと会ったとき「由々しき問題だ」と言ったんだ。
国際オリンピック委員会(IOC)が最も重視しているテーマは、有形・無形の「レガシー」(精神的・物理的遺産)だ。開閉会式が行われるメインスタジアムを後世に残すことも、そのひとつではないか。たとえば、1896年に近代オリンピックの第1回大会(ギリシャ)が行われたアテネに残る「パナシナイコ・スタジアム」は、紀元前329年に建設され、改修されたものだ。
第1回五輪と同じく、マラトンの丘からスタジアムまでを走る「アテネ・クラシック・マラソン」の際にこのスタジアムは使われてはいるが、トラックは直線が長く、カーブは極端に急なため公式大会は行われていない。それでもアテネは「レガシー」として残している。