日米球界コロナ禍 値切られる入札選手と20億円失うマー君
日米球界に猛烈な逆風の嵐が吹いている。
新型コロナウイルス感染拡大により、開幕の延期が決定しているプロ野球とメジャーリーグ。プロ野球は4月中の開幕を目指しているが、国内外のプロリーグは軒並み中止や延期に追い込まれている。コロナ騒動に終息の見通しが立たない中、4月中に開幕できるかどうかも不透明だ。
12球団とNPBは入場料収入やスポンサー契約、放映権料などの問題もあり、全143試合に加え、クライマックスシリーズと日本シリーズのポストシーズンを通常開催したい意向だ。が、日本シリーズは選手稼働期間のギリギリとなる11月末に設定されており、開幕日が後ろにズレればズレるほど日程消化は難しくなる。試合数の削減、ポストシーズンの短縮、無観客試合での開幕を強いられかねないのが実情である。
もし公式戦を無観客で実施した場合、球団経営の根幹をなすチケット収入は1円も入らず、球場内での飲食やグッズの売り上げも見込めなくなる。チケット収入は1試合当たり1億円程度といわれており、各球団の屋台骨を揺るがしかねない。
球団経営が悪化すれば当然、選手の給料に直結する。中でもワリを食いそうなのがFA選手だ。
■ヤクルト山田は残留も
昨オフのFA市場は、大物不在でも好景気だった。ロッテ入りした福田や美馬、楽天入りした鈴木を巡って、多くの球団がマネーゲームを展開。福田に至っては、年俸3600万円から4年総額6億円に跳ね上がるなど、「FAバブル」の恩恵を受けたが、今年はそうはいかなくなるだろう。
「今オフの目玉選手はトリプルスリーを3度達成したヤクルトの山田です。ソフトバンクは5年50億円級の条件を用意している、なんて話が出ているほどですが、今季、通常開催の試合が減って売り上げが落ちれば、ない袖は振れない。今オフは一転、FA不況に見舞われ、ヤクルト残留の目が出てくるかもしれません」(パ球団査定担当)
日本人選手のメジャー挑戦にも少なからず影響する。
早ければ今オフにも、巨人の菅野、ソフトバンクの千賀がポスティングによるメジャー挑戦を容認される見通しだ。
MLBは日本以上に深刻だ。17日には今後8週間は開幕を延期すると発表した。スポーツライターの友成那智氏は言う。
「先日、オーナー側と選手会の話し合いにより、2~4週間の練習期間を経た上で開幕に臨むことが決まっている。開幕は早くても5月末~6月頭となり、年間162試合の開催は難しいでしょう。仮に公式戦が120試合になった場合、主催試合が1球団21試合減る。入場料収入や放映権料の見直しなどによる損失額は、マリナーズのような中規模の球団でも100億円を超えるとみられます」
菅野と千賀は2017年のWBCで日本代表のダブルエースとして活躍した。その当時、メジャースカウトからは、「今すぐこっちに来れば、100億円を稼げる」との声すらあった。「菅野は昨季、11勝6敗、防御率3・89と不調だった分、評価を落としていますが、特にワリを食うのは千賀でしょう」とは、前出の友成氏。
「千賀は27歳と若く、球威のある速球と落差の大きいフォークが武器。メジャーでは、かつての野茂のように、成功する確率が高い選手と評価されている。複数球団による競合は必至で、通常なら6年120億円程度の条件を提示する球団もあるだろう。しかし、開幕延期による損失が生じれば、高額年俸選手の争奪戦に参加できない球団が出てきても不思議ではない。手を挙げる球団が少なくなればなるほど、マネーゲームは落ち着く。6年100億円程度に収まるとすれば、千賀は20億円を失うことになります」