新谷仁美直撃<2>陸上が嫌いなら何のために走っているの?
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――そのような意識が、13年世界陸上モスクワ大会1万メートル5位の後の「この世界で認められるのはきれいごと抜きでメダリストだけ」という言葉になり、昨年のドーハ大会1万メートルが11位に終わると「ただただ日本の恥だと思う」になった。
「結果がすべてではないとおっしゃる方もいますし、私自身もそれは理解しています。国際大会は参加することに意味があることもわかっています。でも、我々選手はそれだけではなくて、その分の支援をいただいているということをわかった上で走り、発信していかなければいけない。実業団の選手たちにはそれをわかっていただきたいです」
■過程なんてどうでもいい
――いつからそんな考えになったのですか。
「2014年(1月)に引退して一般社会に出たとき、『実業団の陸上選手って、いい仕事だよね』って言われたんです。それが私のことが嫌いで言ったのか、陸上のことが嫌いで言ってるのかわかりませんが、純粋に応援してくださる方ばかりではないということがわかった。スポーツ選手に対してマイナスイメージを持っている人がいるのかと。私自身が経験したからこそ、伝えていかなければならないと感じています」
―――厳しい言い方ですが、日本の陸上は世界でなかなか通用しません。新谷さんのトラック種目も非常に厳しい。国際大会で通用する選手が出てくれば、「走るだけでご飯が食べられていいですね」などという声は出てこないと思いますが。
「原因は私たち選手にあるのです。陸上の魅力は私たち選手がつくらなければいけないのです。日本代表になったから満足していたら、出るだけで終わってしまう。それだけでは魅せられるものは何もない。一番わかりやすいのはタイムよりも結果です。スポーツがわからない人にとって、中盤に粘ったとか、終盤まで頑張ったとか、過程なんてどうでもいいことなんです。シンプルに伝えられるのは結果です。長年陸上やってきたからこそわかることなんです。例えば五輪メダリストなら、単純に『すごい』となるが、『中盤粘ったから、すごい』という言葉にはならないと思う。正直、それって関係者たちの自己満足に過ぎません。そんなことは練習でやればいいことですし、ましてや国際大会では意味がない。魅せる場、勝負の時は、単純に、はっきりした順位を出すことが我々の評価されるところなのです」=つづく
(聞き手=塙雄一/日刊ゲンダイ)
▼にいや・ひとみ 1988年2月26日、岡山県出身。興譲館高では3年連続全国駅伝出場。3年連続1区の区間賞獲得。2005年全国優勝。同年全国都道府県対抗女子駅伝1区区間賞、インターハイ3000メートル優勝、世界ユース3000メートル銅。07年東京マラソン優勝。12年ロンドン五輪5000メートル、1万メートル代表。11年世界陸上テグ大会5000メートル13位、13年モスクワ大会1万メートル5位、19年ドーハ大会1万メートル11位。右足故障悪化で14年1月引退、18年現役復帰。19年全国都道府県対抗女子駅伝の東京アンカー(9区)として7人抜きで区間賞。20年同大会も9区同賞。1月米ヒューストンのハーフマラソンで1時間6分38秒の日本新記録樹立。東京五輪5000メートル、1万メートル参加標準記録突破。積水化学所属。166センチ、43キロ。