「教わったことをすぐ覚えちゃうのがすごいネ」師匠の元関脇高見山が驚いた曙の本当の強さ
同じことを白鵬(現宮城野親方)についても聞いた。
入門後まもない白鵬に部屋の関取、光法が稽古をつけていて師匠の先代宮城野親方(元幕内竹葉山)に「親方、この子は強くなりますよ。教えたことがすぐできる」と言ったという。「その他大勢」だった少年が、22歳で横綱になった。
2人とも相撲経験のない「たたき上げ」だった。曙は生前、「なまじ相撲をかじっていないから、何を教わっても当たり前のように聞けて、のみ込みが早かったと思う」と述懐したが、「たたき上げ」がみんなそうではない。相撲に限らず、言われたことをすぐできるのは早熟の王者に共通の希少な資質だ。眼力のある師匠でも入門させてみないと分からない。確率の問題ともいえる。
分母(入門者)が減り続け、アマチュア相撲経験者があふれる今日、新入幕力士の快進撃が続き、春場所ではまだちょんまげの尊富士が優勝したが、同じスピード出世でも曙や白鵬とは印象が違う。「寝て起きるたびに強くなる」と言われるような青年横綱は、もう生まれないのだろうか。(若林哲治)
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