IWGPシリーズ最新刊を上梓した石田衣良氏に聞く
「それぞれのキャラが定着して、青春小説みたいな部分が残っているので、懐かしい友達に会いにいくような感覚になれるんでしょうね。他の小説を書くときの3~4割は楽に進むし、僕自身も書くときに楽しんでいます」
定番のキャラに加え、IWGPのもうひとつの魅力は現代社会の問題点を刹那的に切り取るテーマ設定でもある。今作では問題視されている危険ドラッグやヘイトスピーチを俎上に載せている。
「その時代の先端的な問題をシャープに切り取って、何でも放り込める器ですからね、この小説は。それが古くさくならないのは、今の日本はいろいろな社会問題が解決しないからでしょう。90年代後半からずっとだらだら下り坂である日本の『解決しない感』が小説としては助かっているんですよ。これが今の中国みたいに、問題はあるけど右肩上がりで豊かになっていく社会だったら、古くさくなってしまうでしょうね」
誰もが肌で感じている日本社会の停滞感。これを直球で描く小説は少なくなったともいう。
「時代小説の舞台を替えただけのパクリ小説がなぜか大ヒットしたでしょ。今は『お年寄りと子供を守る!』と自分に酔っている小説がウケる時代だよね。信用ならないよね、ああいうのは(笑い)。それを求める空気もホント、不思議ですよね」