怪談で残暑を乗り切ろう編
妖怪が跳梁跋扈する5編の短編時代小説。
(新潮社 1400円)
■「怪談」小池真理子著
<私>に失恋した達彦はS岬から身を投げて死んだ。20年後、<私>は達彦が最後に宿泊したペンションを訪れる。夜、眠れずにラウンジに下りていくと、ひとりパソコンを打っている男がいた。その男は奇妙な話を始める。病で死んだ恋人はピアニストで、美しい指をしていた。男は女の死骸から盗んだその指を持っていると…。怖くなって部屋に戻ろうとした<私>に、男は言った。「部屋などと……。あなたも岬から来たんでしょうに」(「岬へ」)
恋にとらわれた死者をめぐる短編7編。
(集英社 1400円)