「吾輩は猫画家である ルイス・ウェイン伝」南條竹則著
食事の前に感謝の祈りを捧げる猫の家族など日常の生活から、自動車の登場で職を探さなければならなくなった馬車の御者や、婦人参政権を獲得するための運動の様子など世相を描いた作品、中には猫が着物を着たジャポニズム風の作品まであり、その作品はユーモアに満ちながらも「風刺であるとともに記録であり、ノスタルジーをかき立てる」。
しかし、妹の死をきっかけに精神を病んだウェインは、分裂症(統合失調症)と診断され病院に入院。入院中も絵筆を握り続けたウェインの描く猫は、病気の進行と共に奇怪に、サイケデリックに変化する。その頃の作品は「万華鏡猫」などと呼ばれ、精神病理学の教科書にも掲載されているという。
生涯を猫の絵に捧げた彼の作品は、決して古びることなく、100年後の今も、愛猫家の心をくすぐる魅力に満ちている。
(集英社 1200円+税)