グッスリ眠りたい人のために 最新「睡眠本」特集
「スタンフォード式 最高の睡眠」西野精治著
暑さで寝苦しい夜が続くこの季節は、睡眠不足に悩まされる人も多いことだろう。しかし、食事や運動と並び、睡眠は健康のために欠かせない要素。早めに解消しなければ、どんな不調に襲われるか分からない。そこで今回は、世界最先端の睡眠研究所の成果をはじめ、最新睡眠本4冊を紹介。今夜こそグッスリ眠れますように……。
西野精治著「スタンフォード式 最高の睡眠」(サンマーク出版 1500円+税)は、最新の科学的エビデンスに基づく睡眠本の決定版である。1963年に設立された世界初の本格的な睡眠研究機関であり、現在でも睡眠研究の総本山として知られるスタンフォード大学の睡眠研究所。その主たる基礎研究機関である睡眠生体リズム研究所で2005年から所長を務めるのが、日本人医師である本書の著者だ。
何時に寝て何時間眠ればよいかなど睡眠に関する俗説がさまざまあるが、著者がスタンフォードで導き出したのは、「90分の黄金法則」。レム・ノンレムの周期にかかわらず、睡眠の質は眠り始めの90分ですべてが決まり、最初の90分でつまずいてしまうと、どれだけ長時間寝ても自律神経は乱れ、ホルモン分泌にも狂いが生じるのだという。
長く起きていると、“眠りたい”という睡眠欲求である「睡眠圧」が高まってくる。そのほとんどが放出されるのが眠り始めの90分で、睡眠の第1周期のノンレム睡眠時だ。これはスタンフォードの実験でも明らかになっており、第2周期、第3周期では第1周期より深く眠ることはできない。そのため、第1周期で深く眠れなかった8時間睡眠の人より、最初に深く眠った6時間睡眠の人の方が、自律神経が整い成長ホルモンも盛んに分泌されて、すっきりした目覚めを迎えることになるという。
眠り始めが肝心と言われても、寝つきの悪さに苦労している人も多いだろう。しかし、眠りのスイッチを知っていれば、黄金の90分を深く眠ることが可能になる。そのスイッチとは、「体温」と「脳」だ。
まず、質の高い眠りを得ているとき、人間の体温は下がる。臓器や筋肉、脳を休ませるためだ。ただしこれは、皮膚温度ではなく深部体温のこと。健康な人の場合、入眠前には皮膚温度が上がって熱を放散し、深部体温を下げるように働く。眠くてむずかる赤ん坊の体が熱くなるのもこの現象だ。
意図的に皮膚温度を上げて深部体温を下げるには、入浴が有効。ただし、皮膚温度の上昇を経て深部体温が下がるまで約90分かかるため、就寝1時間半前までには入浴を済ませておきたい。
脳のスイッチは、“単調な状態”をつくることにある。つまり、いつものパターンで退屈させることがポイント。スマホのゲームやハラハラするミステリー小説などはご法度だ。
いつも同じ曲を聞く、読んだことのある本を読むなど、ルーティンを決めるのもおすすめだという。睡眠の最新知識を学び、最高の睡眠をマスターしてみては。
「睡眠を整える」菅原洋平著
脳機能のリハビリテーションに従事する作業療法士が伝授する、よりよく眠るための技術。
睡眠と覚醒をスムーズに切り替えるには、5つの神経伝達物質が鍵を握るという。例えば、集中力を高め脳の覚醒を維持するノルアドレナリンは、分泌が低下することで眠気を誘う。この特徴を利用し、就寝30分~1時間前ぐらいから、洗濯物をひたすら畳むなどの単純作業をすると、自然な入眠が得られる。
夜中にふと目を覚まさせるのは、目新しい刺激に反応を促すアセチルコリンの仕業。レム睡眠に差し掛かると、スマホや読みたい本などに無自覚に注意が向き、目が覚めやすくなる。これを防ぐには、眠りに関係ないものは寝床に持ち込まないことが肝心だという。
神経伝達物質を上手に操れば、質の高い睡眠が得られるのだ。
(祥伝社 550円+税)
「不眠の悩みを解消する本」三島和夫著
不眠症には大きく分けて3つのタイプがある。
「過覚醒」では、不安や抑うつによる緊張状態により、わずかなことにも過敏に反応して眠れなくなる。背景にはうつ病が隠れている場合もあるため注意が必要だ。
夜型や夜勤の多い人は、体内時計が狂う「リズム異常」で不眠症に陥りやすい。病院では、強い光を浴びる光治療や、メラトニン類似の効果を持つ睡眠薬が用いられることもある。
体の状態を一定に保とうとする機能が何らかの影響で働かなくなり、疲れても適切な睡眠が取れなくなる「恒常性異常」による不眠症もある。
本書では睡眠障害のひとつである不眠症について基礎から分かりやすく解説。自分の不眠タイプを知るためのチャートも掲載されている。まずは眠れない理由を知るところから始めよう。
(法研 1300円+税)
「人生が劇的に変わる睡眠法」白濱龍太郎著
とある睡眠クリニックにやってくる7人の患者に対し、医師が睡眠の正しい知識を説く、という対話形式で、よりよい睡眠法を解説。
睡眠不足を妻に心配され無理やり連れてこられたという50代の中小企業経営者。仕事が山積みの自分には睡眠など無駄だと取り合わない患者に、医師は睡眠不足による認知症のリスクを伝える。アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβタンパク質は、睡眠中に減少し、目を覚ますと再び増えていく。このバランスが整っている間はいいが、睡眠不足が続くと増加ばかりが進み、認知症のリスクを高める恐れがあるのだ。
他にも、睡眠不足で過食になるOL、寝だめしても疲れが取れないと訴えるサラリーマンなどに医師がアドバイス。あなたに似たケースがあるかもしれない。
(プレジデント社 1300円+税)